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[考察]

 

脆弱X症候群の遺伝子異常のスクリーニングにおいて、Pfupolymeraseを便用したPCR法を用いることにより、簡便にスクリーニングし得た5)6)。PCRにおいては、Pfupolymerase以外に、dGTPの一部を7−deaza−dGTPに置き換えることと、DMS0を加えることで、正常バンドが安定して出現するようになった。我々のFRAXAのCGGリピートの異常延長の有無の検討においては、46例中、1例のみバンドが検出されず、他は全例、正常範囲のバンドが検出された。バンドが検出されない場合、CGGリピートの異常延長によりPCRがかからなくなりバンドが出現しない場合と、PCRの技術的問題によりバンドが検出されない場合があるが、このバンドが検出されなかった1例は、サザン解析で脆弱X症候群であることが確認された。よって、PCRの問題によりバンドが出現しない、偽陽性例はなかった。また同様に、FRAXEのGCCリピートの異常延長の有無の検討では、全員正常範囲内のバンドが検出され、患者あるいは偽陽性と考えられる例はなかった。
よって、Pfupolymeraseを用いたPCRスクリーニングは、脆弱X症候群のスクリーニングに簡便で、有用な方法であった。
また、今回検出された症例は、3歳であるが、大きな耳介、ながい顔、猿線、わん曲指などの所見を認めた。乳幼児では臨床徴候が著明でないといわれているが、リピート延長が長い例では早期に諸症状が現われると考えられ、これらの臨床徴候も診断に十分寄与すると考えられた。この様に、この症例は臨床徴候が特徴的であり、また、リピート延長が約2.8kbと高度であるにもかかわらず、染色体の脆弱部位が検出されておらず、染色体検査の限界が再認識され、診断には遺伝子解析が必須であると考えられた。

 

 

 

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